大竹 力

福島県猪苗代町在住の自然ガイド。磐梯山、安達太良山、吾妻山周辺の山岳のほか五色沼などの自然探勝路を案内。健康運動を取り入れた笑いのあるガイドを得意とする。幼児から高齢層までの幅広い年代層を年間2,000名以上を楽しませる。ふくしま認定ツーリズムガイド。「磐梯山の力」を主宰。
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磐梯山 冬の日失敗談

今だから話せることがある。厳冬期に山頂を目指しながら何度撤退したことか……これからの登山者のために、冬の磐梯山での体験を記してみた。瞬間移動曇り空のある日、わたしたちは強風の赤埴山を通過し標高1,350mの沼ノ平付近にいた。北西の季節風が相変わらず強い。同行者がブルブル震え寒いと言う。わたしは立ち止まりグローブのレイヤリングを促した。その時だった、体重60kgの彼がわたしにぶつかってきた。約2mだがヒトが飛ぶのを初めて見た。ボウル状になった地形では風が渦巻き反対方向からの突風が起きる。見えぬ物の怖さを感じた。昼食の楽しみその日は晴れていたが、寒かった。11時頃に水を飲もうとペットボトルを開けた。
何かおかしい。見ている間にメリメリと凍っていくではないか。その時間約1分。もしやと思いコンビニで買ったおにぎりを出した。見事にカッチカチであった。その日初めてゼリー飲料が美味しいと感じた。マイナス15℃の弘法清水にて。あとたった200m弘法清水が下の方に見える。スノーシューを使える斜度ではなかった。腰まで埋まりながら少しずつ登攀するも遅々として進まず。ゼイゼイしながら目前の山頂を見上げると、右太腿がピキピキと痙攣しはじめるではないか。「落ち着け自分」と口に出し、10分後に動きだす。新雪の海を泳いで下山。熱い思い3月のある日の午後、雪面は固く調子よく歩けた。日焼けが心配だったのでニット帽からキャップに替えた。寒くなってきたが日没が近いので下山を急いだ。正直に言うと我慢をしていた。 一週間後、妻に言われた「あなた、耳たぶがボロボロよ」凍傷になり耳の表面が壊死したのだった。そういえば、寒いはずなのに耳だけが熱かった。再生して良かった。若き日の苦き思いの恥ずかしさ 磐梯の山 わが智となりし